学術委員会

学術委員会からのお知らせ
 日本中毒学会学術委員会は,日本中毒学会が推奨する「急性中毒の標準治療」と主な中毒起因物質に関する「中毒医療ガイドライン」を策定することを当面の作業目標としている.詳細は学術委員会議事録を参照されたい.
 7月10日に開催される第25回日本中毒学会では,標準治療として強制利尿と血液
浄化法について,これまで委員会内で論議してきた内容を踏まえ,ワークショップとして,会員諸兄と論議をつくしたい.学術集会までに御意見をお寄せいただけるなら,下記までメールにて連絡ください.なお,胃洗浄,活性炭,腸洗浄については,すでに確定版を中毒研究に掲載しております。 

日本中毒学会学術委員会委員長 吉岡敏治

2003年6月



ワークショップ 急性中毒の標準治療:消化管洗浄
日本中毒学会学術委員会
     吉岡敏治、奥村 徹、白川洋一、浅利 靖、島津岳士、坂本哲也、村田厚夫
     亀井徹正、冨岡譲二、遠藤容子

 American Academy of Clinical Toxicology(AACT)/European Association of Poisons Centres and  Clinical Toxicologists(EAPCCT))が1997年にPosition Statementsを出し、消化管洗浄の知見、基本手技を刊行した。その後1999年に、AACT/EAPCCTはethylene glycol poisoningのpractice guide linesを公表しているが、これに止まっている。一方、わが国では、中毒医療における基本処置についてすら施設によって未だまちまちである。そこで、日本中毒学会が推奨する「急性中毒の標準治療」と主な起因物質に関する「中毒医療ガイドライン」を作成することを当面の作業目標として、昨年、学術委員会が発足した。
 まず、標準治療の基本骨格を要約、原理(有効性を含む)、適応、禁忌、方法(準備物品、中止の基準を含む)、合併症と定め、現在までに胃洗浄、活性炭の投与、腸洗浄の標準治療を作成した。委員会内での議論を終え、本年4月から開設した日本中毒学会のホームページでこれを公開している。
 いずれも内容は極めて実践的で、委員会内でもそれぞれの基本骨格毎に議論があったが、インフォームドコンセントのあり方のように、共通した議論もあった。ワークショップではさらに広く参加者の意見を求め、現時点での議論をつくしたい。
 要旨を以下に記すが、第24回日本中毒学会までにはぜひ、ホームページから原文を参照して頂きたい。
 胃洗浄は、ときに重大な合併症を起こす。基本的には服用から60分以内に実施しなければ効果は少ない。したがって慣習的に行なうべき手技ではなく適応を選んで行うべきである。主な注意点は、気道内への誤嚥防止(実施体位、嘔吐への備え、危険な症例には事前の気管内挿管など)、食道・胃の損傷防止(禁忌症例を避け、胃管の選択や挿入手技に注意)などである。なお、活性炭に吸着されないと分かっている薬毒物以外は活性炭の投与を、下剤投与の適応があるかぎり下剤を併用する。
 活性炭は、消化管内で薬毒物と結合し体内吸収を減少させる。臨床的予後を改善するという大規模な無作為抽出試験はないが、吸着効果は各種の研究で証明されている。禁忌及び活性炭に吸着しない物質以外の全ての中毒で、特に薬毒物服用60分以内の活性炭投与が推奨される。成人では25〜100gを胃管から注入、または、座位で服用させる。合併症発生率は、意識清明時は3.6%、意識障害時には18.8%であり、特に意識障害時の気道管理が重要である。
 腸洗浄は、活性炭に吸着されにくい物質や腸管吸収が比較的遅いと予想される物質の中毒、あるいは他に有効な治療手段のない致死的中毒症例に適応と考えられる。洗浄液には、体液異常を起こしにくいポリエチレングリコール電解質液が優れており,1時間に1〜2Lを数時間以上にわたって持続注入する。他の消化管除染法との比較試験は乏しく、活性炭などの吸着剤との併用の可否も十分には分かっていない。



平成13年度第1回日本中毒学会学術委員会 議事録
日 時:平成13年9月14日、12:00〜15:00
場 所;日本救急医学会事務所
参加予定者:吉岡敏治、白川洋一、島津岳士、坂本哲也、奥村 徹、
        亀井徹正、富岡譲二、浅利 靖、遠藤容子、(真殿かおり)
    欠席:村田厚夫

検討課題:
  1.クリニカルパスと標準中毒医療、「中毒医療ガイドライン」
  2.ガイドラインの内容
  3.ガイドラインの体裁
  4.その他

資料1.Position Statements(American Academy of Clinical Toxicology):
Gut Decontamination:Introduction
Ipecac Syrup(11頁)/Gastric Lavage(9頁)/Single-Dose Activated Charcoal(20頁)
Cathartics(10頁)/Whole Bowel Irrigation(10頁) 1997年
multi-Dose Activated Charcoal(20頁) 1999年
資料2.POISIDEX(Forced Diuresis)
資料3.Tox-in(仏):目次、Gastric Lavage(3頁)
資料4.処置手順と基本治療
資料5.各種中毒の対応マニュアル(サリン・シアン・農薬・ヒ素)
資料6.Barceloux, E G et al : American academy of clinical toxicology practice guidelines on the treatment of ethylene glycol poisoning. Clin Toxicol 1999 ; 37:537-560 
参考資料
 1)吉岡敏治: 急性中毒に対する消化管洗浄 −多施設間のアンケート調査より− 
  中毒研究 3:19-23, 1990
 2)吉岡敏治: 急性中毒に対する強制利尿と各種血液浄化法−多施設間のアンケート調査より−
中毒研究 3:111-115, 1990
 3)第11回日本中毒研究会パネルディスカッション「消化管洗浄」 中毒研究 3:25-49, 1990
 4)第11回日本中毒研究会パネルディスカッション「血液浄化法」 中毒研究 3:117-143, 1990
 5)図説救急医学講座、第6巻:中毒(80頁まで)
 6)中毒ハンドブック(監訳坂本哲也、47頁まで)
 7)ABC of Poisoning(監訳吉岡敏治、52頁まで)
 8)救急処置の基本手技(第3版、杉本侃編集)
 9)福井次矢;EBMに基づいた診療ガイドラインの作り方、EBMジャーナル2000;1:438-443.
10)Shekelle PG,et al:Clinical Guidelines;Developing guidelines. BMJ 1999;318:593-596
11)Woolf SH: Practice Guidelines,a new Reality in Medicine;II. Methods of developing guidelines.
  Arch Intern Med 1992;152:946-952
12)Rocky Mountain Poison Center Toxicologist養成コーステキスト
13)基本治療データベースに関するこれまでの研究成果(科研報告書等)

議 事
 American Academy of Clinical Toxicology(AACT)が1997年にPosition Statementsを出し、消化管洗浄の知見、基本手技を刊行した。その後1999年に、AACTはethylene glycol poisoningのpractice guidellinesを公表しているが、これに止まっている。中毒医療に関するデータベースは、むしろ、中毒情報センターが収集整備してきたものがほとんどである。
 わが国では未だ中毒医療における基本処置についても施設によってまちまちであり、日本中毒学会が推奨する「急性中毒の標準治療」と主な起因物質に関する「中毒医療ガイドライン」を作成することを前提に、前記資料に加え、各委員が持ち寄った資料をもとに、free discussionを行った。
 その結果は以下のとおりである。

1.「急性中毒の標準治療」について
 (1)作成項目
   1)基本処置については、胃洗浄、吸着剤・下剤、小腸洗浄、強制利尿、血液浄化法を作成する。催吐、水洗についての作成要望もあったが、当面、これらは作成を見合わせることになった (催吐、水洗については遠藤委員が資料を収集する)。
   2)対症療法については、循環管理(不整脈を含む)、呼吸管理(誤嚥の問題を含む)、痙攣の3種について担当者を決定した(体温管理については、村田委員にお願いしたい)。
    他に作成項目として、アシドーシス、低カルシウム血症、高カリウム血症があげられたが、循環管理等に包含される可能性もあるため、当面はこれらの作成を見合わせることになった。
 (2)基本骨格とボリューム
1)基本処置について
    要約、原理(有効性を含む)、適応、禁忌、方法(準備物品、中止の基準を含む)、合併症を基本骨格とし、A4用紙にして数ページとする。
2)対症療法について
    坂本委員に循環管理についてサンプル原稿を作成していただき、これに準じて他の項目を作成する。サンプル原稿の作成期日はおよそ年内までとする。

 以上標準治療の作成者、作成締め切り、検討期間等は下表のとおりである。

  項 目     作成者  作成〆切り 委員会内回覧  Web公開(一定期間)

  胃洗浄     奥村   11月16日  12月末まで   1月から
  吸着剤、下剤  浅利   11月16日  12月末まで   1月から
  小腸洗浄    白川   11月16日  12月末まで   1月から
  強制利尿    島津   12月末   2月末まで   3月から
  血液浄化法   富岡   12月末   2月末まで   3月から

  循環管理*   坂本    4月末   6月末まで   7月から
  呼吸管理    白川    4月末   6月末まで   7月から
  痙 攣     亀井    4月末   6月末まで   7月から
  体温管理    村田    4月末   6月末まで   7月から

  (*サンプル原稿はおよそ年内に執筆し、基本骨格やボリュームを再検討する)

 (3)公開方法、その他
    項目別に担当者が作成し、委員会内で回覧後、Web上で一定期間公開し、広く意見を求め完成させる。評議員会、総会にて報告し、完成版を準機関誌「中毒研究」に掲載する。
    2002年の学術集会においてワークショップを設けてもらい、担当者一人当たり10分間程度でcontraversialな部分と標準治療とした結論までの説明を行い、ディスカッションする。なお、現在中毒研究に連載中の講座は、review であり、急性中毒情報ファイルシートのごとく、頁なしのオレンジ紙とするか否かは、編集委員会と調整する。

2.「中毒医療ガイドライン」について
 (1)作成項目
有機リン剤等、一部の臨床上有用な中毒起因物質について「中毒医療ガイドライン」を作成する。
 (2)骨格とボリューム
AACTが唯一公表しているethylene glycol poisoningのpractice guidelineに準じたものと、本会議の資料 5.に相当するシートを作成する。
とりあえず、吉岡が有機リン中毒のガイドラインをサンプルとして執筆する。

3.その他
 以下の議論もあったが、これらの内容は理事会で検討して頂くことになった。
 ・中毒学会見解報告の場に関して
  1)中毒研究
   特別号の発刊(学会の実費負担)、もしくは1項目/1刷(4刷/年)
   日本中毒学会編集の単行本
  2)日本中毒学会のホームページ
   日本中毒情報センターのホームページの閲覧会員への登録(+2000円)
    新たに独自のホームページを作成
 ・米・仏のToxicologistについて(参考資料12)
    わが国でのトキシコロジスト養成セミナーの開催と中毒学会認定医




トップへ
トップへ
戻る
戻る